2011年12月30日

涙の釜物語

まいはーい。松本康治です。
さぶおまんな! こう冷えると腰痛のひとつも出るというもんです。
そんなときは銭湯ですね、みなさん。
まあそんなときでなくても銭湯なんですが。

さて年の瀬も押し迫ってまいりましたが、押し迫っているといえば白浜温泉の釜ちゃんほど押し迫った存在も少ないのではないでしょうか。
きのう、きょう、あすと、一日一日を大切に生きながら働き続けている釜ちゃんでございます。

白浜温泉は、だいぶ古びてはおりますが、正面から見るとアール玄関装飾にローマ字で屋号が書かれておりまして、できたころはかなりモダンな銭湯であっただろうことが偲ばれます。

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ただし屋号の文字はほとんど読めませんけど。

正面も味わい深いですが、建物の横に回るとさらに見ごたえがあります。

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けんか祭りの屋台を通すためにバシっと切られた木がすごい。
前栽から生えている樹木の勢いコンテストに出場すればベスト3に入るに違いありません。そういうコンテストがないのがじつに残念です。
そして2階建ての脱衣所棟の板壁も濃い味わいを出しています。
さらにその奥に続くレンガ造りの浴室部分と、そこから真上に突き立つ煙突の構図がまた渋い。
白壁の玄関、樹勢さかんな前栽、木造の脱衣場、レンガの浴室、そして煙突と、5種類のディープな光景が凝縮された状態で一気に目に飛び込んでくる。
これです。これがレトロ銭湯のすごさです。

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さてここで感嘆しているわけにはまいりません。問題はさらにその奥、釜場です。
裏に回ってみましょう。

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レンガ造りの釜場は戸も外れてしまっており、透明のビニールシートがその代わりをしています。
最近「ビニシー系」といって、鮮魚居酒屋などでこういったビニールシートによる屋台風の店づくりが流行っていますが、白浜温泉は居酒屋と間違えてもらおうと思ってビニシーしてるわけではありません。
苦肉の策、というやつなのです。

そのビニシーをめくって中を覗きますと、問題の釜ちゃんが現れます。
薪でしか沸かせない専用釜です。

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釜の口から何かレールのようなものが出ているのがおわかりでしょうか。

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これです。
これが日本で唯一の、釜に設置されたトユです。
トユもびっくりしたことでしょう。トユに生まれて、まさか銭湯の釜に突っ込まれることになろうとは、トユの神でも知らぬホトケのおトユさんです。
そしてこのトユはビニシーの外へとつながり・・・

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ああ、これこそが釜の涙なのです。黒い涙。
おかみさんはこの涙を毎日見ながら、釜を撫で撫で、お湯を沸かしているのです。
釜ちゃんは黒い涙を流しながらも、このように懸命に炎を燃やしているのです。

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ふろいこか〜ラジオはかれこれ21回目を数えますが、これほどまでに壮絶な人間と釜のドラマを目のあたりにしたのは初めてです。
この釜とおかみさんを応援しなければなりません。
それはフロリアンの民として生まれた日本人の責務でありましょう。

白浜温泉のお湯は、今日もこうやって沸かされているはずです。


posted by ふろいこか〜 + 銭湯文化サポーター's at 14:04| 大阪 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 第21回(兵庫・白浜温泉) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする